サンデーサイレンスは日本のセントサイモンに?

Sunday Silence(サンデーサイレンス)

血統を考えるほど、この馬の凄さと偉大さに気づかされます。

今回はそんなSunday Silenceの血統が今後どうなっていくか、かつての大種牡馬St.Simon(セントサイモン)と比較しながら考えてみようと思います。

どうしてSt.Simonなのか。決して「どっちもイニシャルがSSだなぁ」とか、そんな理由じゃないですよ。

それでは早速。


大種牡馬St.Simon

St.Simonという馬は19世紀後半のイギリスの生産馬で、クラシックこそ出てはいないものの強すぎるままに無敗で引退した馬です。馬名の由来である人名から「サンシモン」と呼ばれることもあります。

競走馬としても名馬ですが、何といっても種牡馬成績が並外れていました。英国クラシックを独占したり、何度もリーディングサイアーを取ったり。

ただその血が広まりすぎたがゆえに血統が煮詰まってしまい、父系としては大きく衰退してしまいました。現在も一応残ってはいるはずですが極めて厳しい状況にあります。よく「セントサイモンの悲劇」と語られる話です。(※もっとも、これは海外ではメジャーな表現ではないようですが)

父系St.Simonが衰退した理由とは

大種牡馬が人気しすぎたあまりに血統が煮詰まってしまったケースとしてはSt.SimonのほかにHerod(ヘロド)も挙げられます。

Herodは18世紀半ば、競馬の歴史で言えば黎明期にあたる馬です。Byely Turk(バイアリーターク)の系統で歴史上初の大種牡馬となり、自身と産駒でリーディングサイアーを取りまくりました。同時代にEclipse(エクリプス)がいたのにです。

St.SimonとHerodには共通点があります。それは親子ともに人気していたこと、母父としても人気したことです。

HerodにはHerod以上に結果を残した産駒のHighflyer(ハイフライヤー)、孫のダービー馬Sir Peter Teazel(サーピーターティーズル)がいました。

St.Simonも自身だけでなく父親のGalopinが大種牡馬として活躍していました。

両馬ともに親子二代や三代で父としても母父としても活躍したため、これでは繁殖牝馬が足りません。ただの活躍じゃなくて10年とか20年とかですからね。

とはいっても当時の人が父系存続に熱意があったとも思えませんし、走るなら交配させるし走らないなら不要だというだけで深く考えてなかった気もします。近親交配が望ましくないのは経験則でわかっていたと思いますが、それでもEclipseとHerod親子の組み合わせは大量に生産されて、実際その期待に応えて走ったそうです。

代を経てSt.Simonもクロスが出来上がるようになり、俗に奇跡の血量と呼ばれる18.75%、4×3のクロスが沢山いたと言います。名馬Hyperion(ハイペリオン)だとかNearco(ネアルコ)の父Pharos(ファロス)なんかもそうです。

調べればわかりますが20世紀の馬は遡れば血統表のいたるところにSt.SimonやGalopinがいます。現代の競走馬にはだいたい血量10%くらいが相当すると言われているらしいです。改めてサラブレッドの遺伝子プールの狭さを感じさせられますね。

Sunday Silenceの後継者たち

St.Simonの父系が衰退してしまった要因の一つとして父Galopinの存在を挙げました。

ではSunday Silenceはどうでしょうか。その子は成功していますが孫世代は大種牡馬となれるのでしょうか。

というわけでSunday Silenceの後継種牡馬、そのサイアーラインを見てみましょう。

大本命ディープインパクト

なんといってもディープですね。この10年くらいの日本競馬は間違いなくディープ時代でした。

ディープ産駒のなかで有力なのは、現状では以下あたりでしょうか。

  • キズナ

アベレージが高く、GⅠ馬も複数輩出しています。ただ惜しいことにまだ牡馬の大物は出せておらず、Storm Cat(ストームキャット)などの影響もあるのか自身が見せたようなキレを牡馬には継承できていません。しかし24世代からは種付け料が1000万円を超えており、繁殖の質が上がったことで状況の好転も望めます。

  • シルバーステート

早熟性と勝ち上がり率の高さは素晴らしく、クラシックも皐月賞なら手が届く期待感があります。キズナ同様まだ大物は出ていませんが繁殖の質に合わせてその可能性は上がっていくでしょう。たとえば22世代ダービー馬ドウデュースの母Dust and Diamonds(ダストアンドダイヤモンズ)にも交配しているようですしね。

  • リアルスティール

少し仕上がりが遅めではあるものの、勝ち上がり率が高く評判になりました。またレーベンスティールのような素質馬も輩出しており、血統の良さもあって後継候補としては有力と考えています。

  • フィエールマン(未デビュー)

体質が弱く、また長距離路線での活躍が主でしたが、あのアーモンドアイに府中で迫った秋天を見れば能力は疑いようがありません。血統的に言えばディープ産駒のGⅠ馬は大半が母方に米国系の血統を持つのに対して本馬は欧州系です。それはつまり米国系の血統と交配できるということですから、そうした配合におけるアドバンテージは大きいでしょう。ちなみにプログノーシス母方が欧州系です。

  • コントレイル(未デビュー)

言うまでもなく後継候補の大本命ですね。母父Unbridled’s Song(アンブライドルズソング)は現在大ブレイク中のスワーヴリチャードと共通しており、追い風となっています。一つ不安があるとすれば本馬は強い根性を見せた馬でしたが根性は一般に遺伝しないことでしょうか。とはいえ東スポ杯2歳Sの走りからしてスピード能力は抜群で、それが産駒に遺伝すれば間違いなく結果を出せるでしょう。

  • シャフリヤール(現役)

リアルスティールが牝系の良さから結果を出せているとして、この馬も牝系が優れています。また毎日杯とダービーでレコードを更新する早熟性とスピード、ドバイSCを勝ったことも評価を高めています。全兄アルアインが苦戦しているのは気がかりですが、本馬の方が結果は出していますし繁殖の質さえ用意されたなら期待できると思います。

  • Auguste Rodin(オーギュストロダン) (現役)

本馬のほかにSaxon Warrior(サクソンウォリアー)やStudy of Man(スタディオブマン)もいますが、こうした海外の産駒というのは父系存続においてきわめて心強い存在です。St.Simonも世界中に広まったからこそ存続しているのであり、日本では主流ではない血統との間にサイアーラインを伸ばしてくれるかもしれません。本馬に関して言えば、条件は選ぶものの自分の土俵であれば相当な力を証明しており、あとはどこまで繁殖を集めるかですね。

刺客ハーツクライ

あのディープに凱旋門以外で唯一土をつけたのが、刺客ハーツクライでした。

であるならばサンデー後継として大本命のディープインパクトに待ったをかけるのもまた、この馬なのかもしれません。

  • ジャスタウェイ

世界のジャスタウェイは伊達でなく、種牡馬としてもヴェロックスやダノンザキッドを輩出しています。今一つ期待に比べて苦しんでいるところはありますが、なんとなく意外性があるというか、ヤマニンウルスのように突然スケールの大きな馬が後継になる可能性を感じています。

  • スワーヴリチャード

まだ初年度産駒がデビューしたばかりではありますが、圧倒的な成績を残していて一気に後継候補として名を挙げました。前述した母父Unblidled’s Song、さらには母母父General Meeting(ジェネラルミーティング)もSeattle Slew(シアトルスルー)×Alydar(アリダー)×Nijinsky(ニジンスキー)の血統で早熟性とスピードを担保しています。来年の種付けからは種付け数も増えるでしょうし、夢が広がります。

  • シュヴァルグラン

母の良さから個人的に期待していたのですが、今のところはまだ苦しい成績となっています。ただまだ始まったばかりですし、日本においてジャパンCを勝った馬の種牡馬としての成功率は高いことからも長い目で見たいところです。自身同様に仕上がりが遅い可能性も高いですしね。

  • サリオス(未デビュー)

まず牝系に期待がかかりますよね。母Salomina(サロミナ)は有名なドイツSラインの流れをくみ、産駒は良い走りをしています。サリオスはきょうだい達に比べて早くから仕上がり、かつ走り続ける頑丈さも持っていました。古馬になってからはやや苦しい時期も続きましたが、2度目の毎日王冠の走りを見れば実力は問題なかったですね。レコード馬場でも勝てる走りは魅力的です。

  • ドウデュース(現役)

強いです。特にダービーで見せた走りは圧巻で、歴代でもかなりのハイレベルなダービーだったと思います。鞭を入れたときの反応の良さ、その切れ味は日本競馬を象徴するにふさわしいと言えるでしょう。懸念点を挙げるとすればこの馬の強さの源の一つであろう食欲は産駒にはおそらく引き継がれないことで、プール調教を始めとしたタフさを産駒が発揮できるかは分かりません。

個性派ステイゴールド

圧倒的な個性で根強い人気を誇るステイゴールド系。

安定感には欠けるものの、何かを起こしてくれそうな予感を抱えているのはこの系統の持ち味です。

  • ゴールドシップ

社台グループのバックアップをほぼ受けずに善戦し、牝馬とはいえクラシックの勝ち馬まで輩出したことは素晴らしいと言えるでしょう。後継候補はまだ見つからないものの牝系を強化している貢献は大きく、マイネルラウレアのように末脚を持つ馬も出てきているので希望は繋がっています。

  • オルフェーヴル

自身の実績に比べて、種牡馬としては厳しい評価を受けていました。あまり頑丈でない馬も多く、直近では期待されていたオーソリティも種牡馬入りが危ぶまれています。ただダートにおいてウシュバテソーロを中心に活躍馬を出したことで状況は一変し、芝ダートに期待できる種牡馬として再び種付け数で人気種牡馬へと返り咲きました。能力はGⅠ級と評価されたソーヴァリアントも種牡馬にはなれるでしょうし、ここからが本領発揮というところでしょうか。

そのほかの伏兵たち

ディープ、ハーツ、ステゴ……人気のこれらではないところから直系は繋がっていくかもしれません。面白そうな馬をいくつか挙げてみます。

  • キタサンブラック

Sunday Silence産駒ブラックタイドの子にしてウマ娘3期の主人公にも選ばれた顕彰馬。あまり期待されていなかったのですが、イクイノックスやソールオリエンスを出して何もかもひっくり返しました。そのスピードはまさにSunday Silenceの血を証明するものと言えます。間違いなく系統を広げていくと思われますが、果たしてどこまでいけるでしょうか。

  • アドマイヤマーズ(未デビュー)

上述したキタサンブラックの産駒で世界最強とも言われるイクイノックスは4歳での引退が噂されています。そのイクイノックスと同様に4歳で引退したのが、アドマイヤマーズでした。2歳で朝日杯を無敗で制覇、3歳ではNHKマイルCと香港マイルを勝つという高い早熟性とスピードを示し、ダイワメジャー後継として大きな期待とともに種牡馬入りしています。クラシック挑戦には疑問符がつきますが、2000m以下の舞台ではかなり期待できると思います。

  • クラウンプライド(現役)

UAEダービーを勝利してケンタッキーダービーへ挑戦。3歳から古馬とも互角に戦い、明けて4歳ではサウジCとドバイWCでともに5着。あらゆる馬場で堅実に走り続ける広い適性は非常に魅力的です。Sunday SilenceとMr.Prospector(ミスタープロスペクター)のクロスを持ちキングカメハメハも抱えているため血統的には前途多難ですが、Storm Catは持っていないしFrench Deputyも持っていません。リスク以上の期待が持てると私が生産者ならば考えます。

  • コパノリッキー

ダートスプリントで存在感を発揮しているアームズレインや名古屋で無敗街道を突き進んでいるセブンカラーズなど、ここにきて期待馬を輩出し始めました。配合にも自由度がありますし、ゴールドアリュールの系統では一番期待しています。

Sunday Silenceのクロスというブランド

HerodやSt.Simonがそうであったように、長期にわたって活躍する大種牡馬は意図するしないを問わずにクロスが量産されていきます。現代日本競馬にあってSunday Silenceが含まれない血統は日に日に減っており、その血との距離感は生産者が配合を考えるにあたっても重要なポイントでしょう。

Sunday Silenceにおける奇跡の血量18.75%を満たす4×3といえば、なんといってもエピファネイアですね。初年度いきなりの三冠牝馬デアリングタクト、2年目には年度代表馬エフフォーリア、3年目に2歳女王サークルオブライフと、この三頭はいずれもSunday Silenceの4×3というクロスを抱えています。

4×3と同じ血量18.75%を満たすSunday Silenceの3×4の配合にも活躍馬は多数出ています。代表馬はソングライン。安田記念を連覇したキズナの牝馬で、母母父アグネスタキオンの父にSunday Silenceがいます。他にはオーソリティやメイケイエールもそうです。

このSunday Silenceのクロスを、馬主たちはブランドとして捉えているのでしょうか。

もちろん馬主といっても沢山いるので一概には言えませんが、私は「そうでもない」と感じています。そう思った理由の一つが、今年のセレクトセールでした。

2日目の当歳馬セールで3億円を超えた高額馬たちは、いずれもSunday Silenceのクロスを持っていませんでした。上位11頭まで拡大しても3頭のみ。それもエピファネイアの4×3が2頭とキタサンブラックの3×4が1頭。

日本競馬におけるSunday Silence系の浸透度を考えれば、3分の1にも満たない割合は低いと言えますね。それよりも全体的に海外血統の人気の方が大きいと感じました。素質馬の下は当然人気しますが、上位人気となったのはピクシーホロウの2023(ピクシーナイトの下)、Killer Graces(キラーグレイシス)の2023(キラーアビリティの下)、Serienholde(セリエンホルデ)の2023(シュネルマイスターの下)、She’s a Tiger(シーズアタイガー)の2023(ダノンザタイガーの下)などです。

いずれもサンデークロスを持っていません。これは当歳だけでなく一歳馬でも同じ傾向がみられました。もちろんそもそも内国産の名繁殖はセールに出てきにくいというのもありますが。

上述のSunday Silenceの奇跡の血量で結果を出した馬たちも、デアリングタクトの落札価格は1200万円、エフフォーリアの募集価格は2800万円、ソングラインの募集価格は2600万円、メイケイエールの落札価格は2600万円。実績に比べると安いと言えます。Sunday Silenceのクロスがブランド化されていない証拠と言うのは過言でしょうか。

もちろんこれは同時にSunday Silenceのクロスの力の証拠にもなり得ます。実際、デアリングタクトとエフフォーリアを見てエピファネイアは大きく評価を上げました。エピファネイア同様にSunday Silenceを4列目に持ち4×3を作りやすいモーリスも需要が高まりました。しかし馬主の評価は前述の通りです。

何が言いたいかというと、Sunday Silenceのクロスに対して馬主と生産者とで温度差があるのではないかということです。

生産者にとってのSunday Silenceのクロス

生産者、つまり牧場はSunday Silenceのクロスをどう捉えているのでしょうか。

この件について考えるにあたり大きな事実が二つあります。

エフフォーリア 初年度から満口

皐月賞1着、日本ダービー2着、天皇賞・秋1着、有馬記念1着。レコードのダービーをハナ差で敗れた以外には三冠馬もグランプリ3連覇の馬も退けて勝ち続けた3歳馬として年度代表馬にもなった馬でしたが、4歳時の低迷もあり明け5歳で引退。2月に京都記念後に急ピッチで種牡馬入りしました。

そういったイレギュラーな種牡馬入りにも関わらず、報道によると即満口で種付け数は200頭弱と大人気でした。もちろん3歳秋までの成績や父エピファネイアの需要から比較すれば種付け料300万円は安すぎたということもありますが、それでもこの人気は種付け料と同じくらいに驚きでした。

エフフォーリアは父エピファネイアに母父ハーツクライという血統で、Sunday Silenceの4×3を持った種牡馬です。Sunday Silenceの濃厚なクロスを抱えた種牡馬はこれから増えてくることが予想されますが、このエフフォーリアが即座に満口になった事実は、少なくともこの実績で300万円であれば大いに危険性より期待が上回ると生産者たちが判断したことを意味します。

例えば父がSunday Silence産駒の牝馬と交配した際には、それだけでSunday Silenceの5×4×3ということになります。まぁクロスを科学的に考えれば父または母がクロスを持っていること自体には意味は薄いのですが、生殖能力も含めて通常の馬より危険度が高いのは確かです。

アーモンドアイ キタサンブラックと交配

アーモンドアイといえばルドルフの壁を越えた九冠馬で、特に平坦な東京競馬場では日本競馬でも屈指の強さを誇りました。そんな世界が注目する牝馬にキタサンブラックが交配されたというのです。

アーモンドアイの交配相手は初年度エピファネイア、二年目モーリスと続いてきました。しつこいようですがどちらもSunday Silenceを3列目に持つ種牡馬なので、母父にSunday Silenceを持つアーモンドアイとの間に生まれてくる子はSunday Silenceの4×3ということになります。

ただキタサンブラックは2列目にSunday Silenceを持つ種牡馬のため生まれてくる産駒はSunday Silenceの3×3です。奇跡の血量よりも濃いクロスです。

濃厚な近親交配は産駒のみならず母胎にも影響があると言います。そのため通常は期待のかかる名牝の場合、冒険的なインブリードを避ける傾向があります。そういったことを当然把握したうえでアーモンドアイにキタサンブラックを交配したという事実は大きいです。

この件が意味することはSunday Silenceの3×3は許容できる、挑戦する価値があるということです。たとえば血量で考えてみると3×3は25%。これは先ほど挙げた3×4×5の21.875%よりも大きい数字です。3×3が許容できるなら4×3の種牡馬が許容できるのは当然ということかもしれません。

私はキタサンブラックではなく、ゆくゆく種牡馬入りするイクイノックスと交配させるものだと思っていました。それならばSunday Silenceの4×3ですし危険度は軽減されます。もちろんイクイノックスとも交配するのでしょうが(同じシルクですし)、それを待たずにキタサンブラックと交配したということはSunday Silenceの3×3を挑戦したい種牡馬がいるということなのかもしれません。

もしそうであるならば、それはコントレイルでしょうか。

確かに三冠馬の共演とも言われたJCは盛り上がりましたし、現代の日本競馬において日本生産馬同士だと最も夢のある配合の一つとは思います。しかしコントレイルはノースヒルズの馬ですし、ドライな言い方をしてしまうとアーモンドアイほどの馬で無理してまで挑戦する必要があるとは思えません。

もう一つ予想できることは、Sunday Silence系の牝馬たちを持て余しているという可能性です。日本には大量のディープ肌の牝馬がおり、ハーツクライ、ダイワメジャー、マンハッタンカフェ、アグネスタキオンの肌、そして母父Sunday Silenceの馬も同様です。エピファネイアやモーリス、ルーラーシップやハービンジャーやレイデオロなどが受け皿となっていますが、いつまでも彼らに頼り続けるわけにもいきません。

この交配は配合の自由度を拡張するために試しているのかもしれません。産駒が走るかどうかもですし、馬主(セールに出さずに募集するなら会員)からの人気もです。もちろんSunday Silenceの3×3は初めてのケースではありませんが、アーモンドアイでやるのは他の繁殖牝馬とは影響が違います。この結果は注視するのが良いかと思います。

まとめ

要点を並べます。

  1. 大種牡馬St.Simon(セントサイモン)やHerod(ヘロド)の父系が衰退した要因には何代にもわたって父としても母父としても結果を出したことによる血統の煮詰まりがあった。
  2. Sunday Silence(サンデーサイレンス)の系統は孫の大物種牡馬に困っており、まさかのブラックタイドからキタサンブラックを経てイクイノックスが出たが未だ混迷である。
  3. それだけの系統であれば自然とクロスが出来上がっていくが、生産者はSunday Silenceのクロスに対して濃厚でも許容し挑戦的なのに対して馬主からはそこまでブランド視されていないかもしれない。

ここで主題に返ります。Sunday Silenceは日本のSt.Simonになってしまうのでしょうか。

私は「ならない」と思います。

まず第一に、St.SimonはまだしもHerodの時代は生産の規模が今とは違います。Sunday Silenceは海外にも父系を伸ばしており、August Rodin(オーギュストロダン)のような馬も輩出しました。海外ではSunday Silence系は異系扱いですので、今後も血統の交流は盛んになるでしょう。それは煮詰まりの解消に大いに貢献すると思います。

それから、海外血統の人気が大きいです。Sunday Silenceの4×3のクロスを持つエフフォーリアが満口であったと書きましたが、種牡馬としては同期になるサリオスもまた初年度から満口でした。こちらは繰り返しになりますがドイツSラインの牝系を持つ馬です。

Serienholde(セリエンホルデ)の人気からして、社台SSにて種牡馬入りするであろうシュネルマイスターも大きく人気すると思います。シュネルマイスターは父がKingmanで、Sunday Silenceを血統表に持たない馬です。つまり生まれてくる子供は必ずSunday Silenceのクロスを持たない馬となります。

私はこのシュネルマイスターのように、今後の日本ではDanzig(ダンジグ)系が台風の目となっていくと思います。それはまた別の記事に書こうと思っています。

今の海外血統の人気を考えると、今後もシュネルマイスターのような馬が種牡馬入りしていくのではないでしょうか。たとえばダートではDrefong(ドレフォン)が人気ですし、芝でもDeclaration of War(デクラレーションオブウォー)が話題です。輸入馬ではFrankel(フランケル)も結果を出しています。

Sunday Silenceの血統に対して、もちろん楽観視できる状態ではありません。キングカメハメハとSunday Silenceの両方につけてしまっているため交配相手が限られてしまう馬は沢山現れています。ブラストワンピースが種牡馬入りできなかった理由の一つでもあると思います。

ただ血統が煮詰まって日本競馬が崩壊するだとか、100年後にSunday Silenceの父系は断絶しているかもしれないとか、そういう話にはまだならないと思います。まだっていうか、これからもですけど。

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