いま、モリデインが熱い!
説明しよう!モリデインとは「モーリス×デインヒル」の配合のこと。これがニックスであるとされることから、有名なガリデイン(ガリレオ×デインヒル)にちなんでモリデインと呼ばれているのだ!
……前置きはさておき、今回はそのモリデイン配合について、じっくり紹介と考察をしていきたいと思います。
なおDanehill(デインヒル)などのDanzig系については別記事で紹介しているので、そちらも良ければどうぞ。
モリデイン配合の活躍馬とは
ニックスとされるのは基本的に似た配合パターンで活躍馬が多く輩出される(もしくは勝ち上がり率などが高い)ということから発見されます。
したがってモリデインが話題になるということは、モーリス産駒で母方にDanehill(デインヒル)を持つ馬が活躍しているということですね。さっそく紹介していきましょう。
Hitotsu
モーリスはシャトルで豪州でも種付けを行っているのですが、そうして生まれた豪州産のモーリス産駒の一頭がHitotsu(ヒトツ)。母父がRedoute’s Choice(リダウツチョイス)で、その父がDanehillです。
初勝利まで時間がかかるものの負けていたのはスプリント重賞。流れを経験させて馬を育てる目的があったと言います。やがて未勝利戦を勝ち上がるやいなやマイルG1のコーフィールドギニーを5着と善戦し、一気に距離延長して2500mのヴィクトリアダービーに出走、これを勝ってG1馬となります。
休息を挟むと今度は大幅に距離短縮してマイルG1のオーストラリアンギニーに挑戦。重い馬場に苦しむも勝利してG1を2連勝とします。そこからまた距離延長して2400mのオーストラリアンダービーに出走すると、不良馬場のたたき合いを僅かに制して勝利。これでG1を3連勝としました。
ヴィクトリアダービー、オーストラリアンギニー、オーストラリアンダービーというローテで3連勝したのは史上初です。※Mahogany(マホガニー)も3連勝していますが間に1度敗戦があります。
長めの距離が良いという前評判通りにダービーを2つ勝利していて、非常にタフな馬だったと言えます。残念ながら故障により種牡馬入りとなりましたが、豪州中距離路線で強さを誇り底を見せないまま引退したこともあり、産駒にも期待ができそうです。
Mazu
Hitotsu同様にモーリス初年度のシャトルで生まれたのがMazu(マズ)でした。母父がFlying Spur(フライングスパー)、その父がDanehillです。※ちなみに馬名はat firstの和訳だと思います。ちょうど父と同じ頭文字Mですし。
長めの距離で強かったHitotsuに対し、Mazuは豪州らしいスプリンターです。デビュー後すこし苦戦するも、勝ち始めると5連勝で重賞制覇、そのまま一気に6連勝目でG1を勝利します。1200mのG1ですから価値も大きいです。
その後はなかなか勝ち切れなくなってしまいましたが、豪州で短距離G1を制覇した事実は大きく、モーリスの豪州での人気を決定づける活躍馬と言えるでしょう。
ダノンマッキンリー
2023年12月現在、今年のモーリス産駒(24世代)は一味違うと感じています。4世代目に入ることもあり、育成のコツが掴めてきたという牧場からの声もありました。これまで「モーリス2戦目の壁」と言われていたモーリス産駒の2歳重賞の戦績の悪さを克服するように、モーリス産駒が2歳から躍進しているのです。そのうちの一頭が、このダノンマッキンリーです。母父Holy Roman Emperor(ホーリーローマンエンペラー)の父がDanehillです。
この前の秋明菊賞は度肝を抜かれました。京都1400mの2歳1勝クラスのレースですが、モーリス産駒は3頭出し。うち2頭がペースを流して前崩れの展開となりました。それは出遅れてしまった本馬には確かに展開が向きましたが、それどころではない末脚で直線を外から強襲、上がり34.0で2着タイセイレスポンスに2馬身半つけての圧勝となりました。
道中のラップが12.4 – 11.1 – 11.3 – 11.2 – 11.2 – 11.6 – 11.9。かなりのハイラップは後方にいた分を考慮する必要がありますが、このレースは8頭立てですしそこまでの差はありません。それで最後方にいた3着デルシエロに上がり0.3差をつけた上がり34.0。勝ちタイムは1:20.7、かなりの好時計ですよこれは。
2歳G1の朝日杯において1番人気もありえます。モーリスの新時代を切り開く末脚でした。
ダノンエアズロック
輝かしい24世代のモーリス産駒においてトップ評価を受けているのが、このダノンエアズロック。母父がFastnet Rock(ファストネットロック)、その父がDanehillとなります。
セールでの価格は5億超えですよ、5億円。その価格に見合わない大器、2戦目のアイビーSでは完全に前残りの展開を2番手から上がり32.7の末脚で交わして勝利しました。上がり32.7……。2歳のモーリス産駒とはとても思えない数字です。今までの常識からは外れた存在だと言わざるを得ません。
次走は共同通信杯を予定しています。まず間違いなくこの世代全体でも主役級の存在です。
他にも重賞を勝った豪州生産馬のBank Maur(バンクマウアー)や期待のラスマドレスなどもいますが、この4頭にとどめておきましょう。
実は上に挙げた4頭、うち2頭は豪州生産馬ですし残りのダノン2頭も母が豪州馬なんですね。つまりDanehillとの相性が良いということと同じくらい、豪州血統との相性が良いと言えるんです。豪州はDanehill帝国ですからね。
モリデイン考察その① AmerifloraとDanehill
モーリスの父父は怪物グラスワンダー。日本総大将スペシャルウィークのライバルとされ、ウマ娘でも大人気のキャラです。グラス最強なんてワードも有名で、怪我の影響で能力を出し切れないこともありましたが、グランプリ3連覇の記録以上に人気の高い馬だったと言えます。
そんなグラスワンダーの母Ameriflora(アメリフローラ)の血統構成が、実はDanehillと似ているんです。ともに父Danzig、母父His Majesty(ヒズマジェスティ)。そこにNative Dancer(ネイティヴダンサー)を持っている点も共通しています。
もしこれによってDanehill系の牝馬との間にクロスが発生していることが血統的に相性が良いとされる場合、モーリスだけでなくその父スクリーンヒーローも相性が良いはずですね。
例えばウインマリリン。父スクリーンヒーローに対して母父がFusaichi Pegasus(フサイチペガサス)。このFusaichi Pegasusは父Mr.Prospector(ミスタープロスペクター)でその父Raise a Native(レイズアネイティヴ)、母父Danzigという血統です。Amerifloraの父Danzigと母母父Raise a Nativeに対してクロスとなっているんですよね。
他にはジェネラーレウーノ。この馬は母父Rock of Gibraltar(ロックオブジブラルタル)でその父Danehillという血統です。G1を勝てず種牡馬にもなれませんでしたが、重賞を2勝してクラシックも盛り上げた馬です。モリデインを立証していますね。
スクリーンヒーローは受胎率が低いことでも有名でホームランバッターですが、そこで2頭もG1で勝負になる馬を出しているわけですからスクリーンヒーローとも相性は良かったと言えると思います。
モリデイン考察その② Carnegieと豪州
その①ではモーリスの父父グラスワンダーの母AmerifloraとDanehillの血統構成が似ていること、それのモリデイン配合への影響の証拠としてスクリーンヒーロー産駒の2頭を紹介しました。
そこで今度はモーリスの母方に目を向けてみます。具体的にはモーリスの母父Carnegie(カーネギー)です。
Carnegieは父が言わずと知れた大種牡馬Sadler’s Wells(サドラーズウェルズ)、母に凱旋門賞レコード勝ちのDetroit(デトロワ)という超良血の生まれでした。生まれは愛国ですが仏国で調教、凱旋門賞を勝利して母子制覇を達成しています。長めの距離で渋った馬場が得意という、傾向がはっきりとした成績でした。
Carnegieは日本で種牡馬入りして一定の成績を収めましたが、大物を出すに至らず人気は落ちていきます。その一方で日本からシャトルで種付けしていたオセアニアでは成功を収めており、豪州に種牡馬として移籍するとG1馬を複数輩出することに成功しました。
実はこのCarnegieの母Detroitの半姉の子であるLady Giselle(レディージゼル)の子に豪州の名種牡馬Zabeel(ザビール)がいます。ZabeelはSir Tristram(サートリストラム)産駒の豪州G1馬で、名馬Octagonal(オクタゴナル)を輩出するなど豪州で種牡馬として成功を収めた馬です。Carnegieから見れば従姉妹の子にあたる近親ですね。
Carnegie自身も豪州で種牡馬として成功しており、Carnegieの近親Zabeelもまた豪州で種牡馬として成功していたわけです。であれば、Carnegieを母父に持つモーリスと豪州牝馬との相性が良いのもまた不思議ではないのかもしれません。
CarnegieとZabeel おまけ
もう少し書くと、CarnegieとZabeelは牝系が近親なこと以外にも血統構成が似ています。2頭はDerna(デルナ)という牝馬を共通でもっているのですが、CarnegieはDernaにRiverman(リバーマン)、Sadler’s Wellsという順番でつけており、ZabeelはVal de Loir(ヴァルドロワール)、Nureyev(ヌレイエフ)、Sir Tristramという順番につけています。
Carnegieの父Sadler’s WeiisはNorthern Dancer(ノーザンダンサー)×Fairy Bridge(フェアリーブリッジ)で、Fairy BridgeはTurn-to(ターントゥ)系のBold Reason(ボールドリーズン)×Special。そしてCarnegieの母父Rivermanは母母父Princequillo(プリンスキロ)。
これに対してZabeelの父Sir TristramはTurn-to系にして母父父Princequillo、母父NureyevはNorthern Dancer×Specialです。いずれも名馬、名繁殖なので絶対数が多いのはありますが、しかし共通点であるのは事実です。
さらにZabeelの母母父Val de loirはBlandford系でその母母父父にThe Tetrarch(ザテトラーク)で、Carnegieの母父父父Nasrullah(ナスルーラ)が母父父Blandfordに母母父The Tetrarch。
ここまでくると流石に神経衰弱ですし、そんなこと他にも沢山当てはまる馬がいるだろと言われてしまいそうですが、一応理屈で語ろうとするとこんなところが似ていますよという紹介です。
モリデイン考察 今後の研究課題
モーリスとDanehillの相性が良い理由、モーリスと豪州牝馬との相性が良い理由について書いてきました。人によってはTom Foolだとかも理由として挙げるかもしれませんが、私はまだそこに納得できていないので書かないことにします。
しかしまだ分かっていないことが複数あります。例えば「Danehill系の中でも特に相性が良いとされるのはRedoute’s Choiceについて、なにか説明できるか」。
Danehill系と言っても沢山いることは、この記事の冒頭で紹介している私の過去記事を読んでもらえば分かると思います。それこそHarbinger(ハービンジャー)もDanehill系ですしね。Danehill系である以外にRedoute’s ChoiceやHoly Roman Emperorなどとの相性を説明できれば、Harbingerとの相性を考えるうえでヒントにもなります。
自分なりに考えが見つかれば書こうと思います。……が、現状はさっぱりですね。
まぁ今後も活躍馬が増えていけばヒントも見つかるかもしれません。
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