感想と学び34作目「超かぐや姫!」

今までインプットをおざなりにして生きてきたことを反省し、アニメや映画やラノベを見てブログに感想と学びを書いていこうと思い立ちました。

そうして始まった【感想と学び】シリーズの34作目、映画【超かぐや姫!】を書いていきます。

ネタバレもちろんあります。作品の説明は最低限にしかしません。


簡単な紹介

アニメ「呪術廻戦」のOPなどで名を馳せた山下清悟(敬称略)による初の長編アニメ作品。

月から訪れた「かぐや」と、彼女を拾った「いろは」が出会う。彼女たち2人が仲を深めながらAIVtuberである「ヤチヨ」とコラボライブをするために配信者として活動し、やがて月に連れ戻されるかぐやを見送る。そこで「かぐや=ヤチヨ」にいろはが気づき、最終的にかぐやのデータを使用してアンドロイドとして復活させ、3人で再びライブをして終了。

音楽にボーカロイドの楽曲制作者(所謂ボカロP)を多数起用し、私は世代ながら全く通っていないので詳しく知らないが、ボカロ好きの人たちにとっては超有名な曲を声優のカバーの形で使用されていたとのこと(BUMPのrayは知っていた)。

公開前からYoutubeにて使用楽曲などを使用したMVを流し、十分に話題になる下地を作っていた作品。ネットフリックス限定かつ2時間20分という長尺アニメというハードルはあるが、おそらく口コミを中心に広がっていくことだろう。

とにかく美しい風景や色彩豊かながら鮮明すぎない綺麗な映像は新海誠を、若手実力派クリエイターによる若者向けの懐古的な雰囲気と近未来的世界観を同居させた作風は細田守を想起させる。

……などと先達の名前を挙げるのは野暮で、とにもかくにもこのツインエンジンの渾身の一作を経て山下清悟という名前は知れ渡ることになるだろうし、この作品は「ストロングワールド(ONEPIECE)」「君の名は。」に次ぐようなアニメ映画の歴史的転換点となることだろう。

シナリオに関して

物語はオーソドックスな三幕構成でした。
2人の出会い、配信者としての成り上がりと別れ、正体の発覚と再会。

古典作品であり、日本人であれば大多数は知っているであろう「かぐや姫」のストーリーをなぞりながら現代風にアレンジしています。ざっと挙げると……

【元ネタの竹取物語】
竹を割って拾われるかぐや姫
→あっという間に成長
→みんなから愛されて人気者に
→帝ふくめて男に言い寄られる
→月に連れ戻される

【超かぐや姫!】
七色に光る電柱を開けて生まれるかぐや姫
→あっという間に成長
→配信者として人気者に
→帝というキャラ(いろはの兄)から求婚される
→月に連れ戻される

竹取物語のシナリオを知っている視聴者にとって、そのストーリーをそのままなぞられてもサプライズがありません。そこで冒頭の時点でいろはにより「かぐや姫」の結末を語らせ、またかぐや自身も月から来た自覚があり、「ハッピーエンドにする」ことを目標として掲げさせました。

結果として連れ去られてしまうかぐやに対して、月に向かっていろはが歌います。それを聞いて戻ってこようとするかぐやですが、ミスにより8000年前(ヤチヨ=八千代=8000年)に向かってしまい、いろはと再会するために過ごした8000年でかぐやは大人になってしまうわけですね。

かぐや=ヤチヨは作中一番のサプライズで、主人公いろはがかぐやを拒めないのは彼女が「推し」であるヤチヨだからですし、ヤチヨによる意味深なセリフや歌詞も遥か昔の自分と会いたかったいろはに向けたものと分かると感じ方が変わってくるという、2周目で味が違う仕組みになっています。

悪い意味で創作慣れしてしまっている私は初見で「かぐや=ヤチヨっぽいなぁ」と思いながら見てしまっていたのですが、まさかヤチヨがそのまま8000年とは思わず、そこは意表を突かれました。結果としてこの作品ではいろは×かぐやのガール・ミーツ・ガールというより、いろはに視点を置いたかぐやの物語だったのだなと思います。冒頭の語り部もヤチヨですし。

かぐやはいつもニコニコ明るいキャラですが、ヤチヨは「久しぶりに笑った」と言われるように笑顔の少ないキャラで、彼女の笑顔はデフォルメのようなニコチャンになっていて、人間の世界を知りすぎた彼女は張り付けたような笑顔を身に着けてしまっていたわけですね。

さて最終的に再会した3人でライブをし、最後には仮想空間「ツクヨミ」の形がかぐやの好きだったパンケーキであることを示すことで、あれそのものがヤチヨが作ったもの(誰かに作らせたのでしょうか)なのだとわかります。ループしているからこその運命は良いですね。

もともと月の世界は漫画でしかなく、月からの使者も電脳空間でしか現れず、かぐやが連れ戻されるときにハイライトが消えるのは電柱による実体化から再び電脳化されたわけですね。彼女は電脳的な存在でした。実態のない、まさにバーチャル。

だから最後にいろはがアンドロイドを作ってかぐやを再び実体化します。8000年の時を経てしまったヤチヨとは別にあの頃の姿のままのかぐやの素体に魂を注ぎ込むことで、タイムスリップに失敗したかぐやの代わりに疑似的に成功させてあげるわけですね。多少ご都合ですが、まぁドラえもんオマージュということで、ハッピーエンドだから良いでしょう。

かぐやがハッピーエンドを目指して配信者として頑張っているのを見て、いろはも2人のハッピーエンドに向けて頑張ったのでした。

徹底された刺激の良し悪し

とにかくハイテンポで、キャラが喋り、動き、光がきらめき、歌が流れます。情報量が若干飽和していて、じっくり見せようというよりは次から次に詰め込んでいく感じ。よく言えば目が離せない。言い方を変えれば見ててちょっと疲れます(年のせいではないはず……)。

起承転結のうち承の部分を挿入歌を用いてすっ飛ばしてしまう方式が今作にも採用されていて、かぐやが配信者として成り上がるイベントはダイジェストです。ただこれに関しては帝とのゲームバトルシーンがそれなりの尺で割かれており、バトルシーンが凄いアクションで描かれています。

一方で終盤、ヤチヨがこれまでの8000年を語る部分も語りでのダイジェストになっていて、これは多分1回見ただけだとあんまり頭に入らないんじゃないかな……。

特に「かぐや=ヤチヨ」を知らされた直後ですし、ヤチヨの8000年を経ての心境の変化や積み重ねによるヤチヨへの新たな視点などはもう2周してねって感じで正直投げているように感じました。

テンポが良いのは令和ナイズというか現代的で悪くないと思うんですけど、たぶん「切ない」とか「しんみり」「感動」みたいなのよりも「楽しい」を押し出したいという制作方針から終盤に割くための尺をバトルシーンに使っているのは、ちょっとシナリオ派としては勿体ない気が。

まぁ監督のインタビューを見たところ「1クール必要な物語を詰め込んだけど2時間20分になってしまった」とあったので、そこはこの作品の明確な弱点の1つだと思いますね。長いから余計に感動に時間使えなかったんでしょうね。

まぁこのやりたいことを詰め込んでる感じはサマーウォーズっぽさもあり、全体的にニコニコ動画的なごったにを感じさせるあたり、この作品の良さでもあるのだと思います。好みの問題です。

総括して、終盤の部分や仕掛けとかがもう少し丁寧にしてくれていたら、もっとシナリオ部分も評価されていたんじゃないかなと思います。ちょっと雑になってしまったというか、たぶんあんまり伝わりきっていない視聴者も多いかなと。

まぁバトル面白い、ライブ楽しいって思わせられてれば、それでもう制作陣の勝利ですし、十分なんですけども。

ネトフリ限定は歴史的転換点

いま、世界的に映画産業と言うのは危機に晒されています。YoutubeやTiktokも含めれば映像産業全体におけるシフトチェンジと言っても問題ないのかもしれません。

あれだけ強かったハリウッドもほぼCGになり、無双しそうだった韓国ドラマは映画もドラマももう斜陽にさしかかっています。それはなぜかって、配信サイトの躍進ですよね。

配信サイトで世界中に向けて作ってしまうので、予算も凄いものになり、クリエイターがどんどん流れていく。良いものが作られることで視聴者も流れていき、今は「映画館で映されない映画」が増えていますよね。

今作によって日本のアニメ業界にも、この配信プラットフォームによる独占配信が進行していくと思います。これはもう見終わった最初の感想でしたね。確信しました

日本アニメにおいて「配信限定」の作品は別に今作に始まったことではないですし、TVシリーズにしたって地上波で放送こそすれど配信はディズニー+限定とかアマプラ限定とか、そういうのが増えています。

ただその流れをこの作品は象徴するようになると思います。この作品が話題になればなるほどネトフリ限定であることに意味が生まれ、限定だろうが売れる流れになるでしょう。

映画館をなくした映画に幸せな未来が待っているように私には思えず、アニメにおいても視聴方法が大きく限定されることに私は警鐘を鳴らしたいと思っていますが、製作費の高騰もあってこの流れには逆らえないはずです。

したがって少年漫画に原作者が介入する通称・0巻商法やお金をかけてアニメ映画を作る流れを作った「ストロングワールド」、音楽を用いて作品の流れそのものをコントロールした「君の名は。」に並ぶような、歴史的な作品になると予想します。

感想:見た方が良い

この作品が良いかどうかとは関係なく、見た方が良いと思います。

「君の名は。」でも同じことを言ってます。これは作品として良いとか悪いとか、そんな次元ではなく歴史の転換点だと思うからです。アニメの歴史がいま動いてますよ、この作品が動かしています。

そして最後に、作画がめちゃくちゃ良かったという話をしておかなければなりません。とにかくよかった。崩れるシーンとか一瞬もなく、常に綺麗で可愛く美しく、そして動く。とにかく動く。

見た方が良いです。
アニメが好きな人なら、見た方が良い。

一回見ただけでまだ言葉もまとまっておらず、もっと語ればよかったという部分もあるかもですが、とりあえずこの辺で。

凄いアニメでした。