今までインプットをおざなりにして生きてきたことを反省し、アニメや映画やラノベを見てブログに感想と学びを書いていこうと思い立ちました。
そうして始まった【感想と学び】シリーズの31作目、ラノベ【友達以上浮気未満のカノジョたち】を書いていきます。
ネタバレもちろんあります。作品の説明は最低限にしかしません。
簡単な紹介
転勤族の主人公・四季は東京の高校に通っているが、食へのこだわりと自炊能力の無さから不健康な食事を繰り返していた。彼の中学からの彼女・由奈は遠距離ながら心配し、健康的な食生活を望む。
四季は自炊能力を身に着けるために「料理部」に入る。そこは美少女の花園とも言える女子だらけの環境であったが、なんやかんやあって入部し、煙たがられながらも後輩・葵に懐かれる。
また、別に料理を教えてもらっていた疑似彼女・春、久しぶりに再会した幼馴染・涼らとも仲良く過ごすが、やがてなんやかんやあって彼女たちと親密な時間を過ごすようになり、好意を寄せられる。
四季は由奈への愛から彼女たちの好意に気づいても受け流していたが、最終的に春に惹かれて浮気して終了。
悪行に踏み込む大義名分の用意
彼女持ちの男子に好意を持って近づくのって現代日本の常識から考えれば悪いことで、悪いことをするというのは一般的には読者にとってキャラクターへの心象を悪くする要素なんですよね。
であるから悪いことをさせる場合には、そこに踏み込むにあたって共感まではいかずとも納得はできる理由、大義名分を用意しておくべきだと思います。そのキャラが嫌われても良いキャラではない限り。
今作の場合、葵と涼は由奈が恋する前から四季を好きになっている、ないし好きになる出来事があったというのが大義名分になっています。春に至っては好きになってしまった後に彼女持ちであることを知ったのが大義名分。
つまりこの大義名分が成立する前提として「恋って始まってしまったら止まれないよね」があって、「好きになっちゃったんだから仕方ないでしょ」があるわけです。
ただこれだけでは不十分と見たのか、涼が働きます。
涼は他の2人と違って由奈と既知の間柄であり、彼女は由奈をSNSで直接煽るなどはっきり言って露悪的ともとれるキャラです。これは由奈を脅かす役割であり、脅かされる側の由奈視点の話も挟むことで、由奈の気持ちを全く慮れていない能天気な四季へのヘイト(あるいは諦め)になります。
葵の好意を察しながらも2人きりで出かけるのも、彼女いるのに春を家に招いて2人で料理して食事するのも、涼を家に招いて2人で遊ぶのも四季であり、それを浮気でないと四季が判断することに読者はライドできませんし(故意でしょう)、それもまた大義名分で。
四季にヘイトを誘導するために涼がいるわけですね。春と葵は純真で、彼女たちは憎めない。ただ四季にヘイトが溜まるといけないので、転勤族の属性を用意しています。
転勤族であることが彼の本来の素直な性格とは別に他者への関心の薄さを付与していて、痴情の縺れにつながる人間関係に無頓着でいさせることで許容できるギリギリを攻めているのでした。
浮気って、仕方ないのかも
私は20代後半ですが、だれかと交際した経験がありません。ですので当然、浮気をしたこともされたこともありません。だからそもそもこの作品のキャラには本質的には共感できていないだろう人間です。
ただ最近感じるのは、やっぱ人間って恋する生き物なので、恋をしてしまったら仕方ないのかなというところです。好きになってしまったら仕方ない。その意味で私は葵や春の気持ちは共感できました。特に春は一番優遇されているキャラですから、同情してしまいますよね。
由奈や涼は包丁で刺してきそうな(あるいは自殺してしまいそうな)怖さがあるので、四季にとっても春や葵の方が良いと思います。ただこればっかりはもう別れ話をした瞬間に怖くなりそうなので、四季もどうしようもないというか。
現実でも遠距離で上手くいかないカップルがたくさんいると思いますが、こういう話も本当にありそうで、そういう生々しい緊迫感のある作品でした。
面白かったです。