昨年は社台SSの種付け料と題して記事を書きました。
キズナ凄いねとかエピファ減額おかしいとかナダル流石に高すぎとか、そんなことを書いている記事はこちら。
今年は社台以外の牧場の馬についても触れながら、日本の種牡馬情勢について少し書いていければと思います。基本は種付け料の順に。
キタサン&イクイ 2500万!
驚きと、納得と、困惑と。
まぁイクイノックスが2500万円に値上がりしたのは日本の馬産の傾向からは想像できたことで、セリでもめっちゃ売れてましたし、おそらくですが海外からも種付けに来ているでしょうからね。
イクイノックスは2000万円でも即日満口だったので値上がりするだろうなと私も予想していました。そして種付頭数を分散させる意味も含めてキタサンブラックが一緒に引き上げられたのだと推察しています。
……が、2頭とも今年はまだ満口になってないんですよね。まぁこんな価格にしているからにはもう満口を目指してないのかもしれませんが、ちょっと誤算だった可能性もあると思っています。
一番大きいのは、キタサンブラック産駒が思ったよりアベレージ上がってこないことじゃないでしょうか。
現2歳世代(26世代)ってイクイノックスの東スポ杯を見てから種付けしている世代なので、キタサンも評価を上げているはずなんですよ。ただ反対にガクっと成績を落としている。これは3世代目もそうなんですけど、社台系の生産馬以外の成績が良くないんですよね。
もともと晩成傾向の種牡馬ではあるのでここから大物が出てくるかもしれませんが(エムズビギンとか話題ですよね)、まぁ彼もノーザン生産なわけですし、日高から牝馬三冠デアリングタクトを出したエピファネイアや日高でも圧倒的なアベレージを誇るキズナらより高価格なわけですから、やはりもう一声、いや二声くらいは欲しいところです。
ドゥラメンテやディープインパクトが比較的早めに亡くなってしまったこともあり、コロナも挟んで種付け頭数は抑えめの傾向があります。その中で親子とも200頭近く種付けしているので、150頭くらいに抑えようという狙いもあるのかもしれません。
ただそうした牧場の思惑を抜きに金額だけで考えると、私はこれはちょっと上げすぎじゃないかなと。そこまでの評価をするにはまだ早いと思っています。そんなに他の種牡馬と大きな差があるとは思っていません。イクイノックスは分かりませんけど、彼もおそらく晩成タイプでしょうし。
エピファネイア 再評価の兆し
昨年の記事で、このように書いています。
エピファネイアはエフフォーリア以降に数年苦しんだこともあり一時期の人気には翳りが見え、残念ながら満口になりませんでした。
種付価格も基本は需要と供給で決まるので、今年1200万円に値下がりになってしまったのも頷けなくはないのですが……。
いやでもしかし、エピファネイアが1200万ですか。
今年1500万に戻りましたけど、納得ですね。
なんかどうにも過小評価されているというか、確かに気性難が多くて実績に繋げられない素質馬も多いんですけど、やっぱ持っているものは凄く大きいと思うんですよ。同じシーザリオの産駒の中でも一番良いのはエピファネイアだと思います。
そんなエピファですが、今年は黄金世代で2歳戦を圧倒……していたのですが相次ぐ気性爆発と故障で失速。しかしまだ弾は残っていますし、希望は捨てていません。1戦1勝のノーザン産の馬が控えていますし、ダノンヒストリーなど負けてしまった馬達もここから盛り返してほしいです。
もともとエピファは距離延びてこその種牡馬ですし、アランカールを中心に春は産駒が賑わせてくれると信じています。
ナダルとスワーヴの人気は何だったのか
冷笑みたいで悪いですけど、この2頭の人気って不自然でしたよね。ファッション誌が謎の流行を作ろうとしたりマスコミが面白くもないものを流行らせようとしたり、流行語大賞に政治家のコメントが採用されたときみたいな違和感というか、そういうのがありました。
前提としてスワーヴリチャードの方には馬主さんから種付け頭数が増えすぎないようにしてほしいとの要望があったそうで、ナダルの値上がりも同じように人気殺到を見越してのものだったとは思うんですけども。
でも、昨年の価格ってスワーヴ1500万にナダル1000万ですよ?
これでなぜ繁殖が集まったのか、ちょっとよく分かりません……。
どうにもファン含めて日本競馬全体が「次のサンデー/ディープ」を追い求めすぎていると思うんですよ。だからブリモルにしろエピファにしろキタサンにしろ、人気の集中が極端だなと。コントレイルやイクイノックスに期待するのは分かるんですけどね。
「今は種牡馬が小粒だから」みたいなことを言っている人には、古今東西のリーディングサイアーだけでも調べてみてほしい。
1頭の種牡馬が何年も独占するとか、その息子も含めて10年以上も君臨するとか、そんなの途切れ無しに次から次へと出てくるものじゃないですよ。馬産のレベルが上がればなおさら。だから超一流の種牡馬は凄いなという話であって。
スワーヴリチャードもナダルも期待が大きすぎて気の毒にも感じてしまいます。2頭とも初年度産駒は確かに大活躍しましたけど、別にCPIが低かったわけではないですし……。
スワーヴよりエピファでしょうし、ナダルよりドレフォンでしょう。なぜ既にデビューしていて実績を出している種牡馬より、データの乏しい若い種牡馬の方が人気するのか分からないです。
ちょっと初年度の2歳が良さげと思ったら高額だろうと「今はまだお得」ってFXみたいな買いが始まりますけど、生まれた子をセリで売ったりレースで走らせるまで1年以上の時間が空くんですから、せめて2年目(初年度のクラシックと2世代目の2歳成績)の結果まで待った方が良いと思います。
リアルスティール 非社台で1000万
明らかにBC効果。アメリカから種付け依頼が来てるのかなと邪推したくなります。それなら理解できます。円安なのでね。
でもこの値段で日高の牧場が付けるメリットってほぼないと思います。フォーエバーヤングはノーザン生産ですし、産駒の中で実績2番手となるとレーベンスティールですが、GⅠ勝ち負けできていないのが現状。
今年の2歳が4世代目になりますが、アドマイヤクワッズがクラシック勝ってようやく800万とかじゃないでしょうか。それでも高く感じますけども。
とはいえ、やはりこの馬の産駒がBCクラシックを勝っている事実、そしてその馬はセリで1億くらいで買えたという事実は大きくて。
1000万という金額はダートで世界一を取ることの重みを象徴しているのだと思えば、祝福したい気持ちもありますね。
そのほか雑にコメント
モーリスは600万に減額。
ついに日本での種付けが100頭を切ったので下がったのでしょうが、息子が複数頭スタッドインしているほかシャトルの仕事もあるので、別に問題ないでしょう。
つい最近も豪州で新たにGⅠ勝ち馬が出るなど、盛り返しも期待できそうです。
リオンディーズは500万に増額。
皐月賞馬も輩出しましたし、シーザリオ兄弟のエピファネイア1500万にサートゥルナーリア1000万を思うとシーザリオ需要も見込めると思います。個人的には母父としても期待したくなりますね。
ジャスティンミラノの500万も大きいです。
実績だけなら皐月のみの種牡馬なわけですが、父キズナの需要、ジャンタルマンタルに2度勝利している事実、ダービー2着などの東京適性は評価されて然るべきところ。
言われているような馬主との軋轢がなければ社台SS入りも間違いなかっただろうと思いますし、実際社台入りはしてないですけどノーザンがかなり繁殖を用意しているんですよね。
米国色ある種牡馬に芝短距離の繁殖という近年のトレンドを踏まえると、この馬も初年度が走ったら4桁種牡馬の仲間入りがありえそうです。
エフフォーリアは400万据え置きながら即日万口。
来年デビューなので、デビューまで毎年満口達成となります。
実績と需要を考えれば安いと言えるのですが、しかしセレクトセールなどで高額を連発するというような人気はしておらず、ここまでは「コスパ枠」の評価にとどまっていると見るのが客観的なレビューに思えます。
ちょくちょく触れてますが、評価が不思議なんですよね。
実績は3歳まではほぼ完璧、父エピファネイアは1500万の人気種牡馬、近親にも活躍馬多数、それでいて毎年人気殺到、牧場のコメントもかなり良さげで、なのに値上げはしない。
嘘みたいにインフレしている種付け市場のなかで異色だと思います。
ルヴァンスレーヴは400万に増額。
ちょっと評価を下げていましたが、それは芝路線への期待に応えられなかったためだと思います。未だ大物は出せていないもののダートで堅実に数字をあげていますし、今年の2歳世代はリーディング上位に来ているなど好調です。
3桁頭数の種付けで推移していますし、私は砂の大物の登場も時間の問題でないかと思っています。
ブリックスアンドモルタルは200万に減額して移籍。
うーん……。ちょっと残念です。私はGiant’s Causeway(ジャイアンツコーズウェイ)もExceller(エクセラー)も好きですし、この馬にも期待していたんですけどね。
どこかで大物を出してくれると思っていたのですが、そこまで耐えられなさそうです。なんとか大物出せませんかね。
シャフリヤール 奇跡の復活!
なんといっても今年はコレですよね。本当に良かった。
シャフリヤールってたくさんいるディープ産駒で全兄アルアインもうまくいってないのですが、この馬はノーザン自前のダービー馬ですし、ドバイSC1着を中心に場所を選ばず堅実に走ってましたよね。香港除外からの有馬緊急参戦とか、検疫そのまま中山競馬場の芝で追切して上位。並みの馬ではないですよ。
毎日杯のウルトラレコードに日本ダービーもレコードと高速馬場の適性は折り紙つき。馬体重がアルアインとはかなり違っていて、つまり馬体、すなわち遺伝子にもかなり差があるということ。ディープ牡馬の中でも特にディープっぽい馬で、私はこの馬から大物が出ると強く期待しています。
血統的にも、この馬はストキャを持ってないんですよ。これはもうシンプルにストキャとの組み合わせに期待してしまいますよね。そのほか語るとキリがないですがまたデビュー前に置いておきます。
コスパ良いなと思う種牡馬たち(100万以上で)
まずは上述したエフフォーリアに、ジャスティンミラノもまだ安いかなと。
シュネルマイスターなんかも350万ですが私はダービー目指せる種牡馬だと思っているので安いの判定。
そしてもうバレ始めてますがモズアスコットはめちゃくちゃ熱いですよ。今年まだ種付け料が発表されていないのは、エコロアルバ次第なのかもですね。500万でも安いと思います。
ノーザンの支援ほぼ無しで(エコロアルバは社台育成ですが)今の実績はとんでもないことで、これもまたMiswaki(ミスワキ)の力なのかと感嘆しています。この先が非常に楽しみな種牡馬です。この馬も4桁入りの候補と言えますね。
あとはレモンポップ。Twitterでも書きましたが、日本競馬で走る血統をほとんど持っている、それでいてサンデーフリーなんですから、これはもう当たり間違いなしでしょう。仮に外れても母父で成功すると思います。
それからグレナディアガーズとウエストオーバーもおすすめ。モズアスコット同様にFrankel(フランケル)産駒の良血馬で、どちらもノーザンは期待かけてそうなんですよね。それが150万に250万ですから安いでしょう。
受胎するのならの条件付きですが、シャフリヤールも間違いなくこの価格の馬ではないです。シスキンも300万ならまだ安いと見ます。サリオスも期待したいですが、200万は妥当な気もします。
最後にピクシーナイトを推奨。大怪我さえなければもっと実績を積めていたと思いますし、母父キングヘイローの快速スプリンターである点も魅力的。産駒は中距離でも対応できると思っていますし、200万で止まることはないでしょうね。
最後に
一部の馬の種付け料がインフレするなかで、実績はどの馬も一長一短。アベレージ抜群のキズナは大物に欠け、大物に定評あるキタサンとエピファは波が大きい。
モズアスコットの躍進に、来年はついにエフフォーリア産駒が登場と楽しみがたくさん待っています。
三冠馬コントレイルの成績にも期待ですしね。個人的には2世代目の方が面白そうだと思っています。
引き続き追いかけていきたいです。
