今までインプットをおざなりにして生きてきたことを反省し、アニメや映画やラノベを見てブログに感想と学びを書いていこうと思い立ちました。
そうして始まった【感想と学び】シリーズの20作目、映画【メイクアガール】を書いていきます。
ネタバレもちろんあります。作品の説明は最低限にしかしません。
簡単な紹介
3Dクリエイターの安田現象が自主制作の延長として共同で立ち上げた自社スタジオにより制作した作品。
主人公の男子高校生・明は天才科学者。母親だった稲葉の跡をついで研究に没頭しているが、友人の発言を誤解する形で研究効率を上げるために自律型のロボットであるカノジョ・0号を作り出す。
明を好きになるようにインプットされている0号は明のことを想い、人としての社会性を学びながら献身的に尽くし、その過程で愛も学んでいく。
一方で明はカノジョを作っても研究効率が一向に上がらず、それどころか0号に振り回されることで研究の妨げになっていると苛立ちを募らせていた。
ついに明が0号に破局を言い渡すが、0号は受け入れられず拒絶する。しかし執拗に明に縋り付く0号に対して明は「その感情はインプットされたものだ」と冷たく言い放つ。
やがて明の意志に反した行動を取ることで0号の制御装置が反応してしまい、0号は嫌でも自分がロボットであることを分からされてしまった。
破局しても0号のことを忘れられない明は夢の中で母親の稲葉と出会い、稲葉が本来作りたかったものは病で先が長くない自分の代替として記憶(そして研究)を受け継ぐ存在だったことを悟る。
そして間接的に明は稲葉が0号に転生(厳密には違うが)するまでを繋ぐことが役割だと感じ、0号を作り出すことこそが自分の研究の最終目標に値するのだと受け取る。
0号への愛に気づいた明はなんやかんやあって悪い人物に誘拐された0号を必死に助けた。しかし助けられた0号は自身の明への愛をプログラムによるものではないと認めさせるために制御装置に反発する(その行動として激しく明を攻撃する)。
制御装置の発動によって結局は自傷により気絶した0号。彼女を大切に想いながら明は生活するが、最終的に目覚めた0号は研究室でニッコリと稲葉のように微笑むのであった。
種明かしのタイミング
本作におけるシナリオ上のサプライズ要素といえば「実は明もロボットである」「稲葉が作りたかったのは自分の転生体的な存在(➡︎今作で言えば0号)だったこと」「エリさんが裏切り者であること」となるわけですが、そのどれも早い段階でヒントが出るんですよね。
明はほぼ最初のシーンであかねの前で自身の右手が義手であることを見せます。エリもまた序盤で明の目を盗んでPCを操作し意味深な発言をします。稲葉が明に「自身の記憶」を渡していることも中盤には明かされ、稲葉が自分の記憶を持った存在を明につくってほしかったことは察しがつきます。
この辺は元々が自主制作アニメだったことに由来しているのかなと感じました。
小説としてなら恐らくもう少し隠すのがストレートかなと思います。特にエリとかは早々と提示しておく意味合いは薄いですよね(特に深く掘り下げるわけでもないですし)。
また人造人間を作った側も人造人間だったというのは普通はメイン級のサプライズで、あまりにも作中での驚きが薄味なのは驚きでした。いやまぁ普通にロボットも0号も受け入れられている世界観なので、寧ろ作中キャラが特別喫驚する方が浮くと言われたらそうなんですが。
自主制作アニメだと、声優さんが声を吹き込んだり音がはっきりついたりっていうのが難しい。そうなると制作者が3DCGのクリエイターなこともあって視覚的な情報提示を主体にした作り方になるのは自然な流れですよね。
ただでさえ人によっては難しいと感じがちなSF作品なので、ネックになりそうな部分は視覚的に早めに種明かししておこうという配慮なのかなと感じました。
性愛ではないというサプライズ
明が母親に固執していることは早々と提示されます。そしてカノジョたる0号を生み出しても(自分が生み出した存在だからこそ)0号からの献身的な愛に明の心は強く動かされることがありません。
結果として0号は最終的に稲葉を自らの内に内含した存在となり、その微笑みから本作は明と0号の性愛ではなく明と稲葉の家族愛が軸にあったのだと感じるのが、おそらく本作最大のサプライズなんだろうと思います。
そこは少し王道を外しているというか、人造人間ものって人造人間が人間になりたいと望むにあたって自分が人間でないことを強く自覚させられて暴走した結果に最後は人間になったり人間のように扱われるようになるのが王道ですよね。
だって率直に言ってしまうと、0号の一途な愛(人工的なものですが)は最終的にはバッドエンドにも近い結末を迎えているわけで、そういう意味では義理の妹がヒロインの作品で家族エンドになったみたいな後味になっていますよね。
ここは人を選ぶかなーというところです。視聴者的には稲葉に対しては思い入れはないですし、寧ろ稲葉に対しては感情の薄い科学者(というか大蛇丸)みたいに思えてしまっているので。
個人的には、0号が稲葉の器になってしまうのは悲しかった。最後は捻らずに0号と仲良くしてて欲しかったな。まぁヒロインにはちゃんとあかねがいるので、妹的な存在になるみたいなエンドが良かったです。
感想
種崎敦美さんがね、凄いですよ。
今回、3DCGということもあり動きで見せる方向の演出がなされているわけですが、3DCGであるからこそ(そして大手ほどのリソースはなかったために)、動かないシーンの演出には映像としての難しさがありました。
そうした中で光ったのが、やはり声優さんの演技。とりわけ0号役の種崎敦美さんは流石でした。明役の堀江さんも良かったですし、テーマがテーマなだけにただ感情をそのまま載せれば良いわけでもない中で、メインのお二人は凄く聴かせられる演技だったなと圧倒されましたね。(どこから目線だよって)
作品全体としては、面白かったです。ただ上で書いたようにラストが個人的な好みからは外れてしまったのと、絵里の裏切りが雑だった(尺の都合でしょうが)のが残念で、数字付けるなら65点って感じですかね。
でも0号や茜は一貫して可愛かったですし、友人も良いやつで、またアクションシーンは3Dならではの構図が良かったです。それに僅か8人とかで作った(それもほぼblenderとAEらしい)となれば十二分なクオリティであり、65点という評価は私としては高くつけているつもりです。
次回作も楽しみですね。
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